MAKERS UNLEARN 2026 | STEP 2 根源へ遡る | オンライン講義

技術史

700万年にわたる技術の歴史を、「石器からAIへ」という直線的な進歩の物語としてではなく、人間の身体、暮らし、社会、自然との関係を何度も組み替えてきた複雑で多様な営みとして捉え直す。人類学、考古学、民俗学、素材科学、哲学などを横断。

全8回・16時間
2026.9.17—10.19
アーカイブ公開

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LECTURESアーカイブ

012026年9月17日(木)

技術史概論──いかに「技術」によって「世界」は形作られてきたのか?

七沢智樹(対話:島田将喜/相馬皓介/沓名貴彦)

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300万年を超える技術史の見取り図を示す初回。テクノロジー=わずか5世代・一つの系譜の相対化から、中世の3大発明・メソポタミアを経て足元の旧石器技術へ。眠っている技術の再発見は新技術の開発と同じ価値がある。後半は道具・火・言語・意識の技術哲学——島田さんの「真の模倣はヒトに固有。サルマネはサルにはできない」、相馬さんのアイヌの植物名(アニ・カリンパ)、宮本常一「命をつないでいくための工夫」。結びは四つのジレンマ=技術問題の起源と「縄文には戻れない。しかし内側から破ることはできる」。

進歩史観の相対化眠っている技術命をつないでいくための工夫真の模倣道具のジレンマ
022026年9月24日(木)

動物の遊び・道具使用からみる技術の起源──技術は人間だけのものなのか?

島田将喜(進行:七沢智樹/対話:相馬皓介)

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野生チンパンジー研究25年の島田将喜さんが、技術の起源をヒト以前へ遡る回。ヒトとパン属の分岐は約700万年前=マウスとラットより近い「いとこ」。マハレのアリ釣りは25分で約390匹≒サクマドロップ1個分——栄養では説明できず「どうも遊びっぽい」。教えない学習、ボッソウのナッツ割りと行動・認知の階層性=文法との相似、4300年前のチンパンジー石器遺跡、大人の文化→子どもの遊び→技術獲得の再生産ループ。結びは真の模倣(過剰模倣)こそがヒトの累積的文化を支える——相馬さんの「僕は目的模倣タイプ。猿なんだ俺は」も飛び出した。

アリ釣り遊びが駆動する技術教えない学習行動の階層性過剰模倣
032026年9月28日(月)

「あるもので、なんとかする」──現代の道具を排して見えた縄文の知性

相馬皓介(進行:七沢智樹/対話:島田将喜)

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「現代の道具を一切使わず、自然のものだけでゼロから文明を築く」を5年間実践してきた週末縄文人・相馬皓介さんの回。道端の石が磨き石や編布の錘になるクイズから、翡翠大珠に見る「凝る心」、黒曜石ではなくその辺の石で作った鏃、そして「名詞ではなく形容詞で世界を捉える」知性へ。後半は島田さんと、縄文人はジェネラリストか職人か、労働時間3時間説とフォールバックフード、縄文農耕を縦横に議論。白眉は「砂を2割」のレシピを破って土器が割れた失敗談——レシピの意味は、あとから分かる。過剰模倣は個人の直感では到達しえない知恵にたどり着く人類の仕組みだった。

あるもので、なんとかする形容詞で世界を捉える凝る心ブリコラージュ過剰模倣
042026年10月1日(木)

マテリアルから見える人類の歩み──装飾品を事例に

沓名貴彦(進行:七沢智樹/対話:島田将喜)

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国立科学博物館の沓名貴彦さんが、素材(マテリアル)から前近代日本の技術史を通観。鉄はビール、非鉄はワイン——生きるために必須でない装飾品にこそ火の技術(パイロテクノロジー)の水準が刻まれる。縄文の装い→古墳の黄金→冠位十二階で装飾は仏教へ→武家のモノクローム→南蛮の外圧で復活→江戸のかんざしは「最先端エンジニア」。前近代に人類が使った金属元素はわずか9つ、金属生産は「最も安定なサビからの逆走」、ニーズがなければ技術は退化する(ロストテクノロジーと半導体の綱渡り)。ビスマスなど不純物が語る武田の金山・石見銀山の流通、小判の「色付」をJ-PARCの負ミュオンで非破壊分析する最前線まで。「テクノロジーはサイエンスに先立つ。過去からしか未来を見ることはできない」。

パイロテクノロジー鉄はビール・非鉄はワイン9つの金属元素ロストテクノロジー色付と負ミュオン
052026年10月5日(月)

民具・生業・身体技法──技術の継承と熟練をどう捉えるか

小島孝夫(進行:七沢智樹/対話:沓名貴彦・島田将喜)

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宮本常一の最後の弟子・小島孝夫さんを迎え、山梨県立大学から初のリアル配信。民俗学は「当たり前」がどんな過去とつながっているかを遡る歴史学——えりも岬の日記と『アイヌの民具』の実測図から始まった研究歴を経て、核心は一人の海女が38年間書き残した水揚げ記録。何でも採る→潜る練習→クロアワビ狙い→57歳で「傷をつけない採り方」へ転換し、漁獲額は60歳を超えてピークに。老眼用イソメガネや漁場の合流が体力を補い、引退の年の日平均は生涯平均をわずかに下回っていた——引き際は体でわかる。海女小屋が支える「巧まざる共有」と、柳田國男の三分類から「民具から技術を読む」方法へ。

民俗学は歴史学民具の実測図加齢と熟練巧まざる共有民具から技術を読む
062026年10月8日(木)

汚穢と技術──隔離し、隠蔽し、混じり合うための装置と技法

酒井朋子(進行:七沢智樹/対話:島田将喜・相馬皓介)

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文化人類学者・酒井朋子さんの「汚穢」の回。「今日どのように汚穢と関わりましたか?」から始まり、生活は乱れに触れてつかの間の秩序を取り戻す作業の繰り返し——「汚穢は異常ではない、清浄こそが異常」。「汚」と「穢」は分かれていない:災いと恵みをもたらす人知を超えた領域が、近現代テクノロジーで「汚」に矮小化された。喪中や共食の忌避とコロナ禍の類似、靴と皿の問いからダグラスの「けがれとは場違いなもの」へ。人はずっと手を洗ってきた——病の予防ではなく、手が体の一部であり道具だから。細菌の発見で洗うことは儀式になった。結びはセンザンコウ:災いと恵みをともに受け止める汚穢の技法。

汚と穢けがれは場違いなもの手は道具でもある洗うという儀式災いと恵み
072026年10月15日(木)

都市の起源/国家の形成と技術

小泉龍人

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メソポタミア考古学者・小泉龍人さんの回。問いは「5000年の都市化の歴史」はどう始まったのか。土偶は土器より古い。無人の平原に移り住んだ人々の快適な空間づくりが都市化の始まりで、海面上昇と塩害が生んだ「よそ者」が城壁と、倉庫のドア封泥という「鍵」を生んだ。食器の大量生産のためのロクロ盤を縦に起こすと車輪に。最古の都市ウルクの支配者は銀を求めて1000キロ先に都市をつくった。文字は都市の帳簿から生まれ、よそ者の名を書くために音を得た。銀のリングは神殿ではなく宮殿へ——聖から俗へ。結論は「都市は技術開発の実験場だった」。

土偶は土器より古い快適な空間づくりドア封泥ロクロから車輪へ銀と都市聖から俗へ
082026年10月19日(月)

対談:技術史をどう「語り直す」か──AI時代の技術史入門へ

七沢智樹 × 相馬皓介 × 沓名貴彦 × 島田将喜

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講師4人がそろった最終回。七沢が7回分を「全8回の地図」に束ね直し、3人が自分の回を振り返ったあと、1週間前の原初技術実践(火起こし・黒曜石でイノシシ・石斧で木を倒す)の報告を挟んで、台本のない対談へ。火起こしのヒーローはパワーのある人だが縄文にはいろんな特性が腐らずに活きる場所がある(相馬)、「私はやらなくてもいいか」と言える余裕こそ豊かさで、誰でも使えるデザインは義務を全員に分配する(島田)、石は割ってみないと分からない、過剰模倣は文化の知恵を丸ごと受け取る効率的な仕組み、ハンディカムで遊ぶチンパンジー、和田峠の黒曜石採掘は産業だった、人間は石に取り憑かれたまま(沓名)、色のいいものはヤバいもの。結びは受講生の問い「縄文人は資源化の達人だったのでは」に「流れは止められない。流れの中から向きを変える」と、ナウシカの冒頭を手がかりにした相馬の応答。

技術は身体と切り離せない遊びと余剰過剰模倣石は割ってみないと分からない石に取り憑かれたまま流れの向きを変える

ASSIGNMENT最終課題

最終課題 技術を、語り直す──3つの課題から1つを選ぶ

課題1「足元の技術史」(毎日使う技術を一つ遡る)/課題2「名詞ではなく、形容詞で」(身の回りのものを形容詞で捉え直す)/課題3「自由に問いを立てる」(8回を通して残った問いを一つ立てて考える)。A4で1〜2枚程度・形式自由・再提出可。提出は2027年3月末まで(表彰の対象)。

各レポートは講義アーカイブ動画の自動文字起こしとスクリーンショットから生成したまとめです。発言の要旨は文字起こしに基づき編集していますが、細部のニュアンスは実際の講義動画をご確認ください。受講生の氏名・発言は匿名化しています。