いかに「技術」によって
「世界」は形作られてきたのか?
技術史 第1回
七沢智樹
makers Unlearn 2026 / 2026.09.17
全8回・16時間 / 2026年9月17日(木)〜10月19日(月) 月・木 19:30–21:30 / オンライン(Zoom) / アーカイブ視聴:2027年6月末まで
産業革命とベックマン、中世に撒かれた種、時計仕掛けの宇宙論。技術種の爆発。
料理・衣服・建築の基本構造は変わっていない。眠っている技術と、どこまで遡るか。
鉄より縄が古く、農耕より土器が古い。直感と逆の順番と、腐って消えた技術たち。
技術は人間に固有か。道具はいつ誕生し、何を引き起こし、言語と意識をどう生んだのか。
内でも外でもある/拡張するほど失う/使いこなすほど見えなくなる/止まれない。
二重の意味——時計仕掛けの宇宙と、技術の基層。
講座全体の見取り図。石器から近代産業までを「道具の進歩」ではなく、身体・暮らし・社会構造・世界観を組み替えてきた歴史として俯瞰する。
チンパンジーなどヒト以外の動物の生活全体から「技術=人間だけのもの」という技術像を解体し、身体性と不可分な技術の起源を考える。
縄文を「前段階」ではなく、環境・身体・共同体・審美と結びついた総合的技術体系として捉え直す。効率や進歩の尺度では測れない技術の価値。
石・土・木・繊維・金属——素材の制約と可能性が、エネルギー・加工・流通・権力構造をどう変えたかを横断する。
技術を発明物ではなく「身体+道具+場+語り」が結びついた継承可能な型として捉える。熟練・加齢・役割分担と、伝承の回路。
「きたない」とされるものを見えないようにする技術は、近代にいちじるしく発達した。汚穢を処理する技術と、汚穢とまじわる技法から「生きること」を考える。
西アジアでの数十年の発掘調査から、都市化=技術の複合(農業・貯蔵・物流・建築・計量・記録)を読み解く。「巨大社会」を可能にする技術と、その副作用。
7回分の議論を統合する総括対談。技術は「人間の延長」か「世界の再編」か——これからの技術史の射程を展望する。
私たちが「技術」と聞いて思い浮かべるもの——それがどう作られてきたのかから始めます。
均質に刻まれる時間軸が生まれ、時計仕掛けの宇宙論——世界は法則に従って動く機械だ——へ。のちの科学とテクノロジーの土台。
最初に刷られたのは聖書。ダンバー数(約150人)を超えて世界観を共有できるようになり、地球規模の活動への道を開いた。
数学と科学を発展させ、世界を3次元空間として捉える見方を確立した。宇宙は観測し、計算できる対象になった。
時間・メディア・空間——世界の捉え方そのものが、この3つの発明で作り替えられ、現在を生んでいる。「技術によって世界は形作られる」の第一の意味。産業革命以後の技術の種は、中世にすでに撒かれていた。
アルフレッド・W. クロスビー『数量化革命——ヨーロッパ覇権をもたらした世界観の誕生』(紀伊國屋書店)——中世ヨーロッパで「世界を数で捉える」見方が生まれる過程を描いた一冊。
ギリシャの幾何学。世界を数で捉える見方——望遠鏡以後の科学の土台——は、2000年以上前に生まれていた。
「古代ギリシャのコンピュータ」と呼ばれる歯車式の天体計算機(紀元前2〜1世紀)。時計仕掛けの宇宙の原型。
「テクノロジー」という言葉の部品——テクネー(技)とロゴス(論理)——そのものが、古代ギリシャの発明である。
砂漠に追いやられた民が、灌漑を始めた。自然を改変することで、初めて生きられる——テクノロジー的なあり方の原点。
楔形文字のはじまりは、家畜と穀物の管理記録。文字は、備蓄と分配と権力の子として生まれた。
荷車とろくろ。都市を回すための技術が、ここで生まれる。人類史では意外なほど遅い発明でもある。
爆発するテクノロジーの足元で、変わっていないものを見ます。ここからは、時間を下へ下へと降りていく——足元の一つ一つの技術が、実は何万年もさかのぼる。
鉄より縄が古く、農耕より土器が古い。一つ一つの技術が「実はこんなにさかのぼる」——直感と逆の順番から、技術史の本当の厚みへ降りていきます。
いつ技術が誕生したのか——遡ることで見えてくる技術の意味を考えます。技術は人間に固有か。道具はいつ誕生し、何を引き起こし、言語と社会をどう生み、意識を生んだのか。いかに技術が、人間を人間たらしめたのか——そしてその結果、ジレンマが生まれたところ(技術問題の根源)まで降りていきます。
本当は技術哲学の講義に入れたかった内容です——技術哲学の受講生にも、近々シェアします。
道具とともに生きる人間に、最初から刻み込まれた四つの矛盾へ、一つずつ降りていきます。
今夜の全体を振り返り、ここからの7回へつなぎます。
科学と技術が結びついたのは19世紀後半。その源流は中世の3大発明を経て、5000年前の古代メソポタミア——都市と権力の技術——に至る。
料理・衣服・建築の基本構造は不変。眠っている技術を掘り出すことは、新しい技術の開発と同じように価値がある。
縄は車輪の10倍古く、土器は農耕より1万年早い。腐って消えた生活の技術こそ本体だった。
330万年前の石器はホモ属誕生より前。道具連関が集団を求め、分節化が言語を育て、モノと神話が意識を育てた。
内でも外でもある/拡張するほど失う/見えなくなる/止まれない——ユートピアは過去のどこにもない。ジレンマを引き受けるところから、創造性が生まれる。