MACHINE CONSCIOUSNESS 2026 | DAY2 講演(オンライン登壇)

鈴木啓介「人工外部性 — テクノロジーから意識と現実を問い直す」

2026年10月25日(日)16:17–17:17 | 意識研究財団 カンファレンス「マシン・コンシャスネス」

AIまとめ(登壇者本人の確認なし)
Zoomの自動字幕と、それをもとにした実況投稿から、AIがまとめ、別のAIが字幕と突き合わせて確認したものです。登壇者ご本人の確認は受けていません。字幕の誤認識などにより、内容に誤りを含むことがあります。スライド画像は、登壇者ご本人から提供を受けた講演資料(参加者への共有をご了承いただいたもの)から作成しました。

VRで自己の感覚を変える研究や、幻覚体験を深層ニューラルネットワークで再現する「ハルシネーション・マシン」の研究をしてきた鈴木さんは、意識を考えるために、あえて「現実」の方を考えたい、と話を始めました。前置きとして、統合情報理論(IIT)をめぐる論争がいまも決着していないこと、自由エネルギー原理やIITが既存の数理や技術の上に哲学的解釈を加えて成り立っていること、近年の心のモデルが内と外の境界をどこに引くかを問題にしていることを紹介。そのうえで、現実を「働きかけへの抵抗」と定義し、現実は一つだが、抵抗のしかたによって「基質」「偶有性」「不可避性」の三つの側面で現れる、と論じました。とくに、ブロックチェーン上のスマートコントラクトのように、つくり手自身の介入をも退けるよう設計された構造を「人工外部性」と名づけ、現実の捉え方が意識の捉え方を方向づけること、そして秘密鍵からニューラルネットワークの重みを導く「暗号学的な個体性」をもつエージェントの実装を紹介しました。質疑では、失敗と現実感、暗号鍵を入れることで何が変わるのか、意識をめぐる議論の進め方、主観の閉じと外部、個体性と植物の意識などが議論されました。

1. 導入:意識を考えるために、あえて現実を考える

2. 前置き1:意識理論の論争は、いまも決着していない

スライド:前置き1 疑似科学論争 意識をめぐる論争は、いまも決着がついていない(2004 統合情報理論〔IIT〕の提唱/2021年3月 敵対的協働:IIT対予測情報処理に助成/2023年6月 敵対的協働:IIT対GNWTの初期結果を公表/2023年9月 公開書簡「疑似科学」、124名が署名/2025年3月 Nature Neuroscience:批判・応答・論評)
講演資料より(登壇者提供)

3. 前置き2:技術と心のモデル

スライド:前置き2 技術と心のモデル FEPもIITも、既存の理論の上に立つ(自由エネルギー原理:統計的推論〔変分ベイズ推論〕と制御理論〔「良い調節器」定理 Conant & Ashby〕の上に「推論しているのは、系そのものである」と解釈を加える/統合情報理論:介入的因果推論〔do演算子 Pearl〕と情報理論の上に「因果構造は、経験そのものである」と解釈を加える)
講演資料より(登壇者提供)
スライド:前置き2 技術と心のモデル 先行する技術と「心」のモデル(17世紀 カメラ・オブスクラ→暗室としての心 Locke/19世紀 電信→神経=電線 Helmholtz/1940s 対空砲火の制御工学→サイバネティクス Wiener/1950s– デジタル計算機→心の計算理論 Newell & Simon/1990s– 変分推論・機械学習→自由エネルギー原理 Friston/2000s– 介入的因果推論→IITの因果構造 Tononi/2010s– ? 脳のモデルから技術へ:McCulloch & Pitts、Hebb)
講演資料より(登壇者提供)

4. 前置き3:内と外の境界をどこに引くか

スライド:前置き3 西洋の意識観 20世紀以降:境界を引き直すか、消すか(引き直す側:拡張された心、エナクティヴィズム〔作動的閉包〕、自由エネルギー原理〔マルコフ・ブランケット〕、統合情報理論〔内在的な因果構造〕、グローバル・ワークスペース/主客の分離を出発点にしない:ジェイムズ、西田、メルロ=ポンティ、ライル、ベイトソン)
講演資料より(登壇者提供)
スライド:前置き3 西洋の意識観 西洋近代の意識観:内と外の境界を前提にする(外側の世界:物質・身体・他者、外から記述できるもの/内側の経験:考えている私、内側からしか分からない/境界は前提。問いは、それをどう越えるか)
講演資料より(登壇者提供)

5. 現実とは「働きかけへの抵抗」である

スライド:1763年 サミュエル・ジョンソンによるバークレー観念論への反駁「こうして反駁する」物理的な抵抗こそが、現実を確かめる手がかりだった
講演資料より(登壇者提供)
スライド:本講演での定義 現実とは働きかけへの抵抗である(表象する/疑う/介入する)
講演資料より(登壇者提供)
スライド:抵抗としての現実 表象・疑い・介入は、どこで拒まれるか(1 基質:シリコン/エネルギー/熱、表象への抵抗:物質は描き切れない/2 偶有性:VR/SR/AIとの相互作用、疑いへの抵抗:別様でもありえた経験が、それでも現実として迫る/3 不可避性:ブロックチェーン/契約、介入への抵抗:実行が、つくり手の手を離れる/現実は一つ。抵抗のしかたが三つ)
講演資料より(登壇者提供)

6. 第1層 基質:物質は迂回できない

スライド:本論1 第1層 基質 物質は迂回できない(思弁的実在論 Meillassoux 2006:祖先以前の言明、同位体の半減期・恒星からの光、大いなる外/対象指向存在論 Harman 2011:どんな対象も「退隠」する、どんな関係にも汲み尽くされない)
講演資料より(登壇者提供)
スライド:本論1 第1層 基質 情報も計算も、物質に縛られている(情報は物理的である Landauer 1961:情報を消去するときに、必ず熱が生じる ≥ kT ln 2/計算の非還元性 Wolfram 2002:単純な規則でも逐次計算が必要になる過程があり、予測の近道がない/モデルをつくっても、その実行には物理的な資源が要る)
講演資料より(登壇者提供)

7. 第2層 偶有性:「存在する」と「これが現実だ」の違い

スライド:本論1 第2層 偶有性 仮想の物体は、実在する:FloridiとChalmers(情報的構造実在論 Floridi 2008:物理的な対象と情報的な対象は対等、還元はしない/仮想実在論 Chalmers 2022:仮想の物体は、データ構造とアルゴリズムでできた本物の「対象」、仮想は偽物ではない/これで「存在する」は言えた。なぜ「現実だ」と迫ってくるのかは、まだ言えていない)
講演資料より(登壇者提供)
スライド:本論1 第2層 偶有性 代替現実システム(SR)(原ドクサ Urdoxa, Husserl:目の前の世界を、疑う以前に現実として受け取っていること/ライブ映像〔HMDカメラ〕と過去のパノラマ映像〔360°パノラマカメラ〕を、頭を動かす間に切り替える/通常のVR:いくらリアルでも「仮想」だと分かっている/SR〔Suzuki et al., 2012〕:目の前の映像を「いま、ここ」の現実と受け入れる)
講演資料より(登壇者提供・一部を切り抜き)

8. 第3層 不可避性:つくり手をも縛る「人工外部性」

スライド:本論1 第3層 不可避性 つくった本人をも縛るルール(制度的事実 Searle 1995:みんなが認めるから、お金・国境・所有権が成り立つ。共同の承認が失われると制度として成り立たなくなる〔例:ハイパーインフレ〕/スマートコントラクト:人が解釈するルールから、機械が実行するルールへ〔Szabo〕。手元のパソコンなら電源を切れば止まるが、チェーン上では、つくり手の一存では止められないように設計できる)
講演資料より(登壇者提供)
スライド:人工外部性 ARTIFICIAL EXTERNALITY つくり手の介入をも退けるよう設計された構造(かつて見つけるしかなかった「絶対性」が、いまは設計できる/チャペック兄弟『創造者アダム』〔1927〕の否定砲)
講演資料より(登壇者提供)
スライド:本論2 人工外部性 見いだされる外部、つくられる外部(見いだされる:カント 物自体、ラトゥール 還元不可能性、ハーマン 退隠/つくられる:人工外部性 介入への抵抗を、設計の目標にする。自動化〔停止可能〕、核廃棄物〔副産物〕、官僚制〔権威が前提〕とは、そこが違う。つくり手の意図からは自律している。ただし、電力や検証者には依存したまま/人間の営みの内側から、新しい「外部」が生まれている)
講演資料より(登壇者提供)

9. 現実の捉え方が、意識の捉え方を方向づける

スライド:本論3 意識の話に戻る:各理論は、どの境界を前提にしているか 現実の捉え方が、意識の捉え方を方向づける(1 基質:生物学的自然主義、物質とその因果的な働きに実在性/2 偶有性:計算機能主義、特定の基質に縛られない情報構造に実在性/3 不可避性:社会認知的構成、社会的に成立する主体としての実在)
講演資料より(登壇者提供・一部を切り抜き)

10. エージェンシーと「暗号学的な個体性」の実装

スライド:本論4 含意 エージェンシー 個体性を支える二つの基盤(エージェンシーの三つの条件 Barandiaran et al. 2009/個体性:生物学的な個体=代謝による自己維持、暗号学的な個体=暗号鍵による同一性/相互作用の非対称性:環境との関わり方を自ら調整する/取引を機に、外へ問い合わせる/規範性:自己維持にとっての良し悪しの規範が生じる/自前の規範は、まだない/暗号学的な個体性は、同一性を代謝から切り離す)
講演資料より(登壇者提供)
スライド:本論5 実装 暗号学的個体性の実装 登録は一度。計算の正しさを毎回証明し、チェーンが受理の可否を判断する(1 登録:秘密鍵から重みWを導出、チェーンに載るのはpk・hash(W)・証明だけ/2 計算と証明:NN(W)で新しい状態、証明π+署名/3 検証と受理:登録済みWでの証明、その鍵の署名、直前の状態ハッシュに続くことをチェーン上で検証/保証されること:Wは鍵から導かれ、チェーンには開示されない。それでも、受理される更新はすべてWで計算されたことが証明される)
講演資料より(登壇者提供)
スライド:本論5 実装 拡張 感覚運動の結びつきと、ホメオスタシスによる調節(ウォレット:払わなければ、止まる。devnetで実装済み:ステップごとにウォレットから支払い、残高が足りなければ次のステップに進めない/エージェント:鍵に結びついた計算と、ホメオスタシス的な調節/環境との入出力:行動に応じた問い合わせと署名つき観測は実装済み、実ネット未接続)
講演資料より(登壇者提供)

11. 技術が、また心のモデルを変える

スライド:本論6 テクノロジーと意識 ブロックチェーンは、心のモデルをどう変えるか(先行する技術と心のモデルの年表に、2010s– ブロックチェーン→?を加えたもの/ブロックチェーンは、境界をつくる道具。意識の次のモデルになりうる/計算機も、変分推論も、因果推論も、先に技術としてあった)
講演資料より(登壇者提供)
スライド:Take-home message(1 現実には、基質と偶有性だけでなく、不可避性という様態もある。介入を退ける抵抗は本物の現実であり、いまや設計できる/2 ならば、暗号学的エージェントは、強い意味での自律性を持つ可能性がある。その境界は、第三の意味で現実であり、つくり手にも書き換えられない/3 主体の境界をつくる技術が、意識の問いを変える。何を一つの主体とみなすかが、意識をどこに認めるかを方向づける)
講演資料より(登壇者提供)

12. 質疑応答から