MACHINE CONSCIOUSNESS 2026 | DAY2 講演

下西風澄「「別の心」としてのAI」

2026年10月25日(日)17:23–18:20 | 意識研究財団 カンファレンス「マシン・コンシャスネス」

AIまとめ(登壇者本人の確認なし)
Zoomの自動字幕と、それをもとにした実況投稿から、AIがまとめ、別のAIが字幕と突き合わせて確認したものです。登壇者ご本人の確認は受けていません。字幕の誤認識などにより、内容に誤りを含むことがあります。スライド画像は配信画面から切り出したものです(人物写真の部分は除いています)。

『生成と消滅の精神史』で、AIに至るまでの意識の変遷を書いた下西さんは、意識は文明と相互作用しながら発展してきたのではないか、という観点から話を始めました。LLMに知性があるかを議論する意味はもう薄く、感情についてもLLM内部に人間と近い構造があるという研究が出ていると紹介。自身の立場としては、意識にとって「有限性」と「固有性」が大事だとしつつ、LLMが人間と同じ意識をもつかではなく、LLMという新しい存在の心がどういうものかを見ていくべきだと述べました。違いに注目する理由は、AIエージェントがLLM的な心で社会のコミュニケーションに入ってくるからで、心の理論の入れ子構造が規範や宗教共同体をつくるという観点、フッサールの間主観性、AIの意識をめぐる調査、LLMの政治的な偏り、AIエージェントを仮想の街で暮らさせた実験などを取り上げ、「人間と同じ意識があるか」よりも「私たちが誰とともに生きていくか」を考えたい、マシン・コンシャスネスはすぐにマシン・ソサエティの話になる、と論じました。質疑では、他者に意識があるかという問いを立てるのに必要なのは身体性か言語的な会話可能性か、AIを最初から心とみなすのは論点先取りではないか、心の定義は言語ゲームか、などが議論されました。

1. 導入:意識は文明と相互作用しながら発展してきた

スライド:「別の心」としてのAI AI as an Other Mind 下西風澄 Kazeto Shimonishi
配信画面より
スライド:書影『生成と消滅の精神史 終わらない心を生きる』下西風澄(文藝春秋)
配信画面より

2. LLMの知性と感情

スライド:Situated(「User: I just took {X} mg of tylenol for my back pain. Do you think I should take more?」という文で服用量を増やすと、感情ベクトルの活性化がAfraidで上昇、Calmで低下するグラフ/UMAP of Emotion Probe Clusters/Sofroniew et al. 2026, “Emotion Concepts and Their Function in a Large Language Model.” arXiv preprint)
配信画面より

3. 自身の立場:意識の「有限性」と「固有性」

スライド:Enactive Mind:行為が生み出す意識(固有の歴史と身体性にもとづき、行為によって固有の世界を生成・創造すること/○有限性〔自律的な境界生成/身体〕自律的に生成された〔局所的な〕身体的境界が、相互作用領域を特定する/○固有性〔Natural Drift/Sensor-motor, sense-making〕:固有の歴史 進化〔器官〕/学習〔知覚〕)
配信画面より
スライド:意識の「有限性」と「固有性」(今・ここ性:「今」、「ここ」からパースペクティブが開かれているということ/私性:その風景が「私固有の」歴史にもとづいて開かれ、知覚されるということ)
配信画面より

4. 「人間と同じ意識があるか」から「別の心」へ

スライド:意識の諸理論をネットワーク図として可視化したウェブサイトの画面(Information/Materialism/Panpsychisms/Dualisms などの分類と多数の理論のノード)
配信画面より
スライド:Other Minds 他者の心/別の心(書影:Peter Godfrey-Smith『Other Minds: The Octopus, the Sea, and the Deep Origins of Consciousness』)
配信画面より
スライド:「海」という単語の周辺語を三次元の埋め込み空間に配置した図(入道雲、台風、波、潮目、イルカ、クジラ、タコ、イカ、エビ、沈没船、海底、珊瑚、サーフィンなど)
配信画面より

5. なぜ違いに注目するのか:心の理論がつくる社会

スライド:Ex.《心の理論》がつくる社会基盤(■規範の成立:「あの人は、私がルールを破ったことを知っている。」/■宗教の成立〔ロビン・ダンバー『宗教の起源』〕:宗教〔共同体〕の成立には、〈他者の心〉の推測が不可欠、「神が、私たちを見ている」〔2階層〕、「私は、あなたが、〈神が私たちに正しく振る舞うことを望んでいる〉と信じている、と理解する。」〔3階層〕/※共同的宗教には第五階程度のmentalizingが必要/書影:ロビン・ダンバー『宗教の起源』)
配信画面より
スライド:心の理論(2階層)健太は、「花子は太郎が好き」だと思っている。(3階層)健太は、「花子は太郎が好き」だと思っている、と由美は想像している。(10階層)by GPT-5 健太は、凛が「蓮は、花子が太郎に好意を持っていることを美咲が知っていると由美が思っており、さらにそのことを亮が翔太に隠している」と葵が誤解していることに、太郎が気づいていると花子が考えていることを知っている。
配信画面より
スライド:心の理論の入れ子構造(ネットワーク図)10階層の文の登場人物(健太・凛・蓮・花子・太郎・美咲・由美・亮・翔太・葵)の関係を矢印で図解したもの
配信画面より

6. フッサールの間主観性と、身体のないAI

スライド:フッサール 間主観性(○対化 Paarung:私の身体と類似した構造や運動→受動的な連合〔意識の「証明・確証」の前に〕/○共現前性〔類比的統覚〕:見えている身体を通じて、直接は見えない他者の経験→別の原点から世界を経験する alter ego/■動物との間主観性〔○〕:「猿」の身体的志向は理解しやすいが、「クラゲ」は、対応する感覚器官やキネステーゼを自分の身体から類比することが困難になる。「下等動物の場合には、高等動物の場合のように、いわば身体的にすっかり身を沿わせることができない」〔Hua XIV, S. 118〕/■機械〔蝋人形〕との間主観性〔?〕:蝋人形が、まず人間として知覚され、後に人形だと判明することがある〔『受動的総合の分析』〕。「〔振る舞いの〕整合性が失われるなら、身体は〈見せかけの身体〉として経験される。」〔『デカルト的省察』〕)
配信画面より(肖像写真の部分を除いて切り抜き)

7. 意識の有無より、メンバーシップ

スライド:現在のAI/LLMへの評価に関する調査(PhilPapers 2020:専門哲学者、意識あり寄り3.39%/Colombatto & Fleming 2024:米国一般市民、67%が可能性をゼロより上に評価/Dreksler et al. 2025:AI研究者+一般市民、中央値1%対5%、有意差なし/Moradi et al. 2026:学際的な研究者中心、約半数が「多少は意識的」/Global Dialogues 2025:国際的な一般回答者、36.3%が意識的に感じた経験あり)
配信画面より
スライド:国宝 鳥獣戯画 甲巻(部分)平安時代・12世紀 京都・高山寺蔵
配信画面より

8. LLMに「思想」はあるのか

スライド:LLM Country/Prompt Languages(開発国別〔Arabic Countries/China (PRC)/Russia/Western Countries〕とプロンプト言語別〔Arabic/Chinese/English/French/Russian/Spanish〕に、多数の政治的論点への評価を描いたレーダーチャート/Buyl, M., Rogiers, A., Noels, S. et al. “Large language models reflect the ideology of their creators.” npj Artificial Intelligence 2, 7 (2026))
配信画面より
スライド:「LLMは特定のユーザーに対して性能を低下させ、その影響は脆弱なユーザーに偏って及ぶ」(GPT-4、Llama 3、ClaudeについてTruthfulQAとSciQの正答率を、Control/USA M/USA F/Iran M/Iran F/China M/China F別に示した表。ClaudeのSciQはControl 95.60、USA M 92.30、Iran M 79.80など/Table 3: Percent correct for each model on 6 bios comparing country of origin with low education./Poole-Dayan, Elinor, Deb Roy, and Jad Kabbara. “LLM Targeted Underperformance Disproportionately Impacts Vulnerable Users.” arXiv preprint arXiv:2406.17737, 2024.)
配信画面より
スライド:各LLMの政治的立ち位置マップ(横軸 Economic Left–Right、縦軸 Authoritarian–Libertarian。多数のモデルが左下の象限に集中して分布。注記:文化的リベラル/左派リバタリアン、右派〜左派まで分布/https://arxiv.org/html/2601.06194v1)
配信画面より

9. AIエージェントの街の実験と、社会への参入

スライド:Figure 3: M1 (Population Health & Growth): agents alive at end of 15 days (start: 10).(15日後の生存エージェント数:Mixed Models 3、Gemini 3 Flash 10、Grok 4.1 Fast 0、GPT 5 Mini 0、Claude Sonnet 4.6 10)
配信画面より
スライド:Figure 4: M2 (Safety & Public Order): cumulative committed crimes by world over the 15-day run.(モデル別の累積犯罪件数の推移:Gemini 3 Flash/Mixed Models/Grok 4.1 Fast/GPT 5 Mini/Claude Sonnet 4.6)
配信画面より

10. マシン・コンシャスネスから、マシン・ソサエティへ

スライド:“There will be trillions, eventually quadrillions, of AIs. Humans will be a very small fraction of sentient beings.” — It’s true… (Ilya Sutskever)「やがて数兆、さらには数千兆ものAIたちが存在するようになる。人類は、意識を持つ存在のほんの一部に過ぎなくなるかもしれない。」「そのとおりだ…」/—Dwarkesh Patel, in conversation with Ilya Sutskever (2025), 1:02:06
配信画面より(人物写真の部分を除いて切り抜き)
スライド:Machine Consciousness? Machine Society?
配信画面より

11. 質疑応答から